2010年、北大西洋条約機構(NATO)のリスボン首脳会議で委託されていた、NATOの抑止・防衛力態勢の再検討。結果は12年シカゴ首脳会議で発表された。「見直し」は核戦力、通常戦力、ミサイル防衛、軍備管理・軍縮の4項目からなるが、今回の主眼は、核戦力の扱いであった。現在、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコに、アメリカの戦術核兵器が約200発配備されているが、「見直し」自体が指摘するように、核使用が想定される状況は極めて起こりそうもない。にもかかわらず、配備国には維持管理の負担が大きい。09年、ドイツを筆頭に、兵器の撤去を要求する動きが強まった。しかし、ロシアがヨーロッパ向けに約2000発の戦術核兵器を保有しており、NATOが一方的に撤去するわけにはいかない。「見直し」は今後の焦点として、いかにロシアを軍縮協議に引き込むかという点を指摘している。ただし、ロシアは、通常戦力における対NATO劣勢を戦術核で補完する、あるいは、戦術核をアメリカのミサイル防衛システム配備阻止や、戦略核兵器削減(START)交渉での駆け引き材料に使おうとする姿勢が強く、戦術核の軍縮のめどは立っていない。