2011年、ラスムセン北大西洋条約機構(NATO)事務総長が言及したNATOの今後の防衛能力整備の方針。10年のマドリード首脳会議で採択された戦略概念で、NATOの中心的任務を集団防衛、危機管理、そして協調的安全保障と規定した。これらの任務を遂行する上で、NATO欧州加盟国の戦力向上の課題は大きい。アメリカとの戦力格差が問題となっている。しかし、欧州連合(EU)諸国は債務危機のさなかにあり、財政制約は大きい。その中で打ち出されたのが、スマート・ディフェンスの考え方である。内容的には、NATOが最も必要とする戦力を「優先」し、各国が得意とする分野に「特化」、共通する問題への多国間「協力」の三点で、加盟国間の得意分野を生かしながら、調整を図ることによって、全体として無駄を省き、効率的な戦力向上を図ろうという発想である。12年5月のシカゴ首脳会議で承認された「防衛能力に関するサミット宣言:NATO戦力2020に向けて」においても、スマート・ディフェンスが新しいアプローチの神髄だとされた。