ユーロ圏危機の中、イギリス国内に広がる反欧州連合(EU)感情のこと。歴史的にイギリスは欧州統合には批判的であったが、債務危機はイギリス国民のEU懐疑論をさらに強化した。ドイツやフランスがEUを、戦争を繰り返した歴史を過去のものとする政治的な試みとみなしているのに対し、イギリスはこれを経済的観点からのみとらえがちだからである。共通農業政策や共通漁業政策にしても、イギリスには持ち出しの方が多いと感じている。危機のさなかの2010年に就任したキャメロン首相は、EUとの関係見直しについて、与党保守党内強硬派や野党独立党から強い圧力を受けている。11年12月、イギリスはEUの財政同盟への動きと言える「財政協約」(fiscal compact) の合意を拒否した。統合深化はイギリス抜きで進んでいる。しかし、他方で、輸出の半分がEU加盟国向けであるイギリスはEUから離脱することはできない。大陸の政治に対する発言権を失うこともできない。ジレンマの中で、13年1月キャメロンは、17年末までにEU加盟継続の是非を問う国民投票を実施するとする演説を行った。15年の総選挙の時点で保守党が勝利して、イギリスの加盟条件をEUと再交渉し、その結果しだいで、との条件が付けられている。イギリスでは、国民投票の実施はまれなことであるが、14年9月にはスコットランドの独立を問う住民投票も予定されている。いずれも反対意見の方が根強いとはいえ、国民感情によって結果は予期せぬ方向に漂流する危険もまたはらんでいる。