アイスランドが2010年より行っている欧州連合(EU)加盟交渉。小国アイスランドは規制緩和により国外から巨額の資金を集め、金融立国を誇っていたが、08年のリーマン・ショック後、債務不履行に陥った。自国通貨が暴落したことから、安定通貨ユーロの導入を視野にそれまでの政策を一転、EU加盟申請を行ったのである。アイスランドは北欧諸国との関係が深く、加盟交渉は順調に進んではいるが、まだ先行きは不透明である。交渉の最大の問題は国民の過半数が加盟に反対していること。一方で、EU加盟となれば共通漁業政策の下、主幹産業である漁業への規制を受け入れねばならない。しかし、他方で加盟によって得られる利益の多くは、すでに享受している、という事情がある。欧州経済領域(EEA)に参加しているため低い関税で欧州域内市場にアクセスすることが可能である上、また、シェンゲン協定に署名をしているので、域内の移動も自由である。最近は、北極海航路に関心を寄せる中国が、北極評議会メンバーであるアイスランドに接近、資金を落としていることも影響している。政府は14年秋にも、加盟を問う国民投票を実施する予定である。