ニコラ・サルコジ大統領の5年間の任期満了を前に第5共和制に移行してから10回目の大統領選挙が挙行された。2012年4月22日に実施された第1回投票では現職のサルコジ大統領をはじめ10人の候補が立候補、社会党(PS)のフランソワ・オランドが第1位で28.63%を獲得したのに対して、国民運動連合(UMP)のサルコジが27.18%にとどまった。第3位には極右の国民戦線(FN)の女性党首であるマリーヌ・ルペンが17.90%の得票率でつけ、ヨーロッパ全域を覆った経済危機のあおりを受け、不況に陥った国民の不満を吸収する勢いを示した。それは職業機会を奪う移民労働者、というイメージの浸透とあいまって、移民排斥をうたうFNに対する支持の増大につながったことは疑いない。
憲法の規定により、上位2人による決選投票が5月6日に実施され、オランドが51.62%の得票率を記録したのに対して、サルコジは48.38%の得票率に終わり、1期の任期限りで5年間の大統領職から去ることとなった。オランドは1981年の大統領選挙に勝利し、95年に退任したミッテラン大統領以来、17年ぶりに社会党出身の大統領として当選したのである。
選挙戦で争点となったのは、リーマン・ショック以来の長引く景気低迷と10%を超える失業率の増大に加え、財政健全化を図るための緊縮財政の是非に集中した。結局、フランス国民はオランド派が訴えた公共投資の強化による雇用の拡大路線を支持したと言える。同時に、サルコジ候補自身の大統領としての品格に欠ける言動や派手な個人生活に対する世論の批判が、オランド候補への支持の増大につながったものと思われる。なお、オランド新大統領は、前回の大統領選挙で社会党候補としてサルコジと戦ったセゴレーヌ・ロワイヤル女史の元パートナーである。オランド新大統領は、就任後ジャン=マルク・エローを首相に指名、大統領選挙の公約通り閣僚の半数に女性を登用する内閣を発足させた。