2011年11月のスペイン総選挙で政権についた中道右派政権。上下両院で獲得した絶対過半数を背景に、積極的な緊縮財政策や構造改革を断行してきている。13年末、国債の利回りの落ち着き、輸出の伸びなど若干の明るい兆しが見え始めているが、失業率の高さは依然深刻で、特に若年層のそれは57%にも達している。与党の汚職疑惑もあり、国民の政府に対する不満は鬱積(うっせき)している。こうした中、ラホイ政権は政治的にも保守的傾向を強め、国家の威光や宗教の原理を復活させようとしている。目立った動きとしては、国内の分離主義の動きや領土問題への強硬姿勢がある。ヨーロッパ共通の動きとして、ユーロ危機の下で緊縮政策が強いられる中、国内の豊かな地域が地域国家創設の動きを強めているのがみられる。スペインでもカタロニアやバスクの独立要求が新たな高まりを示している。カタロニアは13年12月、独立を問う住民投票を14年11月に実施することを発表した。イギリスがスコットランドの独立を問う住民投票を容認した(14年9月実施予定)のに対し、スペインではラホイ首相が、憲法違反として、住民投票は行われないと発言した。また、スペイン国土には欧州に残る最後の植民地と言われるイギリス領ジブラルタルがある。イベリア半島南端、地中海の出入り口を押さえる軍事的要衝で、18世紀初めのスペイン王位継承戦争でイギリスに譲渡されたが、以後300年間、スペインは奪還を目指してきた。ラホイ政権は特に「ジブラルタル奪還」を唱道し、波紋を起こしている。