2016年5月5日に行われた選挙。パキスタン移民2世の労働党下院議員サディク・カーン(45歳)が当選し、欧米主要都市初となるイスラム教徒のロンドン市長が誕生した。2期8年務めた保守党のボリス・ジョンソン前市長はEU離脱派の中心人物となったが、国政に転じて3期目は出馬せず、後任を選ぶ選挙だった。12人の候補者が並んだが、事実上、上流階級出身の保守党下院議員ザック・ゴールドスミスと、移民家庭から人権派弁護士になったカーンの一騎打ちとなった。結果はカーンが30万票以上の大差をつけて勝利。投票率は前回より8ポイント高い46%で、市民の関心は高かった。保守党はカーンが弁護士時代にイスラム過激派と接点があったことを追及するネガティブ・キャンペーンを展開したが、高騰する住宅価格や公共交通料金の凍結問題を取り上げるカーンが終始リードを保った。その勝因は、旧植民地やEU新規加盟国などからいち早く多くの移民を受け入れてきた、ロンドンの「多様性」にあると分析されている。