2016年6月1日に開通したスイスのトンネル。エルストフェルトとボディオを結ぶ全長57.1キロは、それまで最長であった日本の青函トンネル(53.9キロ)を抜いて世界最長の鉄道トンネルとなった。スイスはヨーロッパの中央に位置するが、4000メートル級の急峻なアルプス山脈が連なり、最大の交通の難所となっている。そのため19世紀末に開かれたのが、北部の主要都市バーゼルからゴッタルド山塊を貫通して南部のルガーノを結ぶ「ゴッタルドルート」であった。全長約15キロのゴッタルド鉄道トンネルが開通したのは1881年。輸送量の増大に伴い、1990年代後半、国家プロジェクト「アルプトランジット計画」(NRLA)が発案された。これは既存のトンネルよりも数百メートル低い位置に、高低差の少ない新しいベース(基底)トンネルを建設することで、新規の高速鉄道を開通させる計画である。ゴッタルド・ベース・トンネルはこの計画の一環として、99年より17年の年月と総工費122億スイスフラン(約1兆3570億円)の国家予算をかけて建設された。特徴としては単線のトンネルを2本並列した単線並列式を採用し、トンネル内でのすれ違いがないため高速運行が実現できる。また非常時でも、もう一方の線路の運行は続けられるという利点を持っている。2本のトンネルは325メートルごとに非常用通路で繋がれており、途中2カ所には、非常時のための脱出用ホームも設置されている。