2007年1月からアメリカは最大で2万2000人の増派作戦を実施した。このことで、バグダッドやアンバル州での治安回復が見られはじめる一方、テロ事件は止んでいない。同作戦の成果として、(1)イラクのアルカイダの能力の抑制、(2)アンバル州を中心に、スンニ派地域での自治組織「覚醒評議会」による治安確保、(3)宗派対立の被害者の減少、が見られた。治安改善の分岐点は、07年7月のバクバでのイラク聖戦アルカイダとの戦いであったとの見方もある。しかし、イラク治安部隊は依然、治安維持能力が不足している。さらに、イランのイスラム革命防衛隊のアルクッズ部隊により武器支援、資金供与がなされているとの指摘があるムクタダ・サドルの民兵マフディー軍や旧バアス(バース)党関係者の存在など懸念材料がある。したがって、多国籍軍撤退後の治安維持の成否は、イラク人により編成されている軍、警察などの組織強化にかかっている。なお、09年6月アメリカ軍はすべての都市から兵員を撤退させ、7月にはイラクに治安権限を移譲している。