イランが秘密裏に核兵器開発を行っているとの疑惑がもたれている問題。イランは1970年に核不拡散条約(NPT)に加盟し、国際原子力機関(IAEA)の査察を受けているが、イランの反体制組織はイランが秘密裏の核開発計画を有していると告発した。さらに2003年6月、IAEAはイランに未申告の原子力活動があることを指摘し、IAEAの査察への完全協力、追加議定書への調印を求めた。その後、IAEAは03年9月および04年9月の理事会でイランの核問題で決議を行い、核開発の全容提示、ウラン濃縮および再処理の停止を求めた。イランとの外交交渉はイギリス、フランス、ドイツによって進められ、04年11月にイランの査察へのいっそうの協力とウラン濃縮作業の一時停止の成果が得られていた(パリ合意)。しかし、05年8月、アフマディネジャド体制は、ウラン濃縮作業の再開をIAEAに通達した。これに対し国連安全保障理事会(安保理)は06年7月、国連憲章第7章40条に基づいた決議1696を採択し、イランに同年8月末までに核開発におけるウラン濃縮活動と遠心分離装置の増設の停止を求めた。しかし、イランは8月に重水製造施設の稼働を公表する一方、ウラン濃縮活動も継続した。これにより、国際社会は06年12月、07年3月、08年3月に安保理で経済制裁決議を採択した。さらに安保理は、08年9月にも濃縮活動の停止を再度求める決議を採択している。イランの核開発問題には、(1)08年9月と11月のIAEAの報告にもあるように、濃縮装置を拡大して低濃縮ウランの保有量を増やしていること(同年7月のIAEA報告では480kg)、(2)アラーク研究用重水炉の建設を続行していること、(3)高圧多連装起爆装置のテストなどの「疑惑の研究」が未解明であることも指摘されている。さらに09年9月にはコム近郊の革命防衛隊施設内で第2のウラン濃縮施設が建設中であることが発覚した。また、11月イラン政府は国内に核開発関連施設10カ所の建設計画を発表し、核開発の権利を主張している。なお、10月、安保理常任理事国5カ国にドイツが加わったグループがイランに対し、低濃縮ウランの一部の第三国での加工処理と実験用原子炉での使用を認める提案をしたが、イラン側は拒否し、2010年2月、濃縮ウランを20%まで高める活動を開始した。