イラン脅威論が高まるなかで、アメリカから湾岸産油国への武器売却が拡大する動き。ブッシュ政権(当時)は、中東和平とイラク問題の進展を目的に、2007年7月、大型軍事支援をエジプト、イスラエル、湾岸産油国に行うと発表した。その内容は今後10年間で、イスラエルに300億ドル、エジプトに130億ドルの支援を行い、対イランを考慮して安全保障を強化したいGCC(湾岸協力会議)諸国には、最新兵器を含めた200億ドル近くの武器売却を行うというものである。武器売却は、売却収入に補修および訓練収入も加わるため、一般的に総額が大きくなる。そのため、代金の一部を産業投資として返却するオフセット契約が結ばれることが多い。アメリカ・サウジアラビア間でのシールド計画は、その代表例である。また07年6月にサウジ・イギリス間で発覚したサウジ要人への資金の逆流(軍事産業会社・BAEシステムズの裏金問題)は、この武器売却の闇の部分をかいま見せる事例でもある。なお、アメリカの湾岸産油国への武器売却に反発したイランは、ロシアからの武器購入を活発化させている。