トルコ南東部、北イラクを拠点とするクルド労働者党(PKK)によるテロ活動と、トルコ政府による対応問題。2006年に入り、トルコ南東部でPKKの犯行と見られるテロや暴動が急増、イラク北部地域も拠点として使われているため、トルコ政府はイラク、アメリカに同地域でのPKK掃討を要求した。これに対し両国は、トルコ領内でのPKK対策と国境管理を強化すべきと回答した。PKKの活発化には、デンマークに拠点があるクルド系衛星テレビが関係していると見られている。同放送は、トルコ政府のPKK対策への抗議行動を呼びかけており、06年3月にはムシュ県で警官隊とデモ隊が衝突、14人の死者が出た。トルコはデンマークに同放送局の取り締まりを要請する一方、PKK掃討作戦を実施している。また、同国は国連憲章51条の自衛権の行使に基づく北イラクへの越境攻撃について、06年4月に同国を訪問したライス米国務長官(当時)との協議をはじめ、アメリカ、イラクと交渉を重ね、07年8月にはイラクのマリキ首相がトルコを訪問、エルドアン首相と対PKK治安協力について協議、覚書に合意した。その後、トルコは10月に国会で政府に北イラク越境攻撃実施の決定権の付与を決定し(期限1年)、11月には国軍に越境攻撃実行権限を与えた。また同月、エルドアン首相が訪米した際、情報協力などアメリカとのPKK対策協力の枠組みが形成された。そして同年12月、北イラクのPKK拠点への空爆、砲撃を本格的に開始し、08年2月には地上部隊による越境攻撃を実施し(報道によると数千人規模)、その後も空爆、砲撃などの越境作戦を継続、10月には国会で越境作戦を1年間延長することを可決した。なおトルコ国会は06年6月「テロ対策法」を可決した。