アブドル・ワッハーブ(1703~87年)が18世紀なかばに創始した、コーランとスンナ(預言者ムハンマドの慣行・範例)に帰れとするイスラムのスンニー(スンニ)派の純粋主義運動。現在でも、同派には極端に復古主義的にイスラムの純化を主張する人々がいる。法学上はハンバリー派に属し、この派の神学者イブン・タイミーヤの思想の影響を強く受けた。スーフィズム(神秘主義)を厳しく糾弾し、聖者崇拝や聖墓詣を禁じた。18世紀後半の運動は、ネジドの豪族サウド家のムハンマド・イブン・サウドと結びつきアラビア半島に拡大したが、その後19世紀にムハンマド・アリーによって衰退させられる。ワッハーブの死後、サウド家の長が教主の地位を継承し、政教両権の保持者となり、20世紀初め、サウド家のアブドゥルアジーズ・イブン・サウドにより復興、再びアラビア半島に広がった。