湾岸協力会議(GCC)諸国では、石油収入の拡大で金融市場、不動産市場が高騰していたが、2008年の世界金融危機によって深刻な影響を受けた。金融危機の影響が直接出たのは株式市場で、アラブ通貨基金(AMF)によると、GCC諸国の7つの株式市場の取引終了後の時価総額は、10月末で7224億ドルであったものが11月末には5954億ドルとなり、1カ月で1270億ドルもの減少となった。また不動産市場でも、信用収縮とこれによる流動性の不足で価格が下落した。一例として、アラブ首長国連邦のドバイ首長国の不動産価格は10月で前月比4%、アブダビで5%の下落となっており、ドバイのリゾート地の住宅はピーク時から19%程度の下落である。そうした中、注目される大型開発プロジェクトの動向は、計画段階のものは無期限延期、着手されているものは完成を目指す方向にある。この基本方針に沿うと、外国人労働者の雇用状況は厳しく、人員の最適化をはかっている企業も出ており、今後もこの傾向は増えると見られている。こうした世界金融危機の第1波に次ぎ、世界同時景気後退による第2波により、エネルギー消費の低下や物、人の移動の減少などがGCC諸国に影響を与えた。中でも、中継貿易や観光産業、商業が中心のドバイ首長国の動向が注目されている。同国を含め、GCC諸国の経済の安定化は先進国の経済回復とエネルギー消費の増加に深く関係している。