エルゲネコンはトルコの地下組織の1つ。「愛国」「民族」といった標語のもとで組織化されたいくつかの政治集団の総体で、反イスラム的(極端な愛国主義的)な組織。その根源は100年前の青年トルコ党による権力掌握にまでさかのぼるともいわれている。組織の目的は、国家を「内なる敵」から守るというもので、暗殺や爆破などの手段を用いることも辞さない。例えば、2008年10月に開始されたエルゲネコン疑惑に関する初めての法廷では、退役准将、労働者党党首、新聞社主筆、大学の元学長など86人が政府への暴動に国民を先導した罪や極秘文書入手の罪で裁かれた。この被告者たちの逮捕は、06年5月に起きた行政審査員襲撃事件の捜査に端を発する。初の逮捕者が07年6月に出てから、証言などから捜査が拡大し、08年に入り、逮捕者の数もレベルも高まっている。この一連の逮捕における問題は、エルゲネコンという組織が09年に軍事クーデター実施を計画し、その目的達成のため、メディアや市民団体を利用して政権を機能不全状態に追い込むことを謀ったとされることである。この捜査や裁判の中で、容疑者たちは「アタチュルク主義」や「反イスラム主義」を隠れみのに、古くからの既得権益を暴力を用いてでも守ろうとしているとの見方もある。一方、民主主義の秩序を守るとの現政権の行動は、イスラム的政権擁護や過去の弾圧に対する報復ではないかとの見方もある。こうしたことから、欧米のメディアには「クーデター疑惑を暴く捜査とともにトルコの政治システム(世俗主義)が崩壊に向かう」「欧州連合(EU)加盟交渉に悪影響」との論調がある。今後、捜査や裁判のプロセスが国際基準に則って実施されるかどうか、動向が注目されている。