憲法第2条で世俗主義をうたうトルコで、イスラムの生活、価値をどの範囲まで認めるかに関する公共のあり方を問う問題。イスラム的政党は一般的にはイスラム法の適用を国家に促すことを求める。与党である公正発展党(AKP)もその傾向があるとの不安を世俗勢力は抱いており、同党が女子学生の大学構内でのスカーフ着用禁止解除を糸口に女性の公の場でのスカーフ着用に道を開く試みは、その不安が現実のものとなりつつあると考えられた。法的には、AKP政権が2008年2月に国会で定数の3分の2以上をもって憲法を改正し、大統領がこれを承認したことで着用禁止は解除された。これに対し、野党の共和人民党(CHP)などの世俗派勢力は憲法裁判所に改正無効を訴えた。これを受け、憲法裁判所は6月、改正無効との判断を下した。この間、教育現場の大学では、大学でのスカーフ着用は憲法改正によって可能となったとする者と、高等教育審議会法の補則第17条の変更も必要として着用を認めない者とが対立した。これにより、各大学での受け入れが混乱したり、スカーフ着用の学生による大学側の受け入れ拒否を検察局に持ち込むケース、座り込みの抗議運動などが見られた。また、市民レベルでも、各支持者たちによるデモが展開され、社会が分裂する問題とまでなった。宗教的シンボルを公共においてどのように扱うかは個人の自由とその境界の法的保護の問題でもあり、今日では欧州人権裁判所でも審議されるようになった。