与党の公正発展党(AKP)の政策が政教分離に違反するものであるとして、世俗派検察官が同党の解党を求めた訴訟問題。AKPは解党させられたイスラム主義政党の美徳党を前身としており、イスラムの習慣や価値観を強く打ち出す人々が党員に多い。それに加え、同党が議会の過半数と大統領ポストを占めたことで、トルコでイスラム化政策が進むのではないかと世俗勢力は不安視していた。2008年3月、最高検察庁検事長は、AKPは政教分離の原則の破棄を試み、宗教的原則に基づく国家、社会を実現しようとしているとして、ギュル大統領、エルドアン首相を含めた71人を5年間の政治活動禁止、およびAKPの解党を求めて起訴した。憲法裁判所は3月31日にこれを受理し、審議に入り、7月30日に判決を下した。判決は、解党させる十分な証拠がないとしてAKPの存続を認めながらも政党助成金削減という制裁を科すもので、事実上、反世俗主義勢力であるとの認識を示した。解党については、01年10月の憲法改正によって、解散に必要な判事の数を11人中6人から7人に変更していた点と、社会を不安定化させる可能性のある解党よりも政党助成金の一部もしくは完全没収で対応することが望ましいとの考えがトルコ国内に広くあった点から、当初より難しいとの評価があった。ただ、解党に賛成した判事6人、反対ではあるが助成金削減に賛成4人、完全反対1人との判決結果は重く、同党への08年の政党助成金交付額4560万リラ(約43億円)のうち2280万リラ(約21億円)の返還が求められた。