イランで2009年6月に実施され、アフマディネジャドが再選された第10回大統領選挙。アフマディネジャド大統領の経済政策や核開発問題での外交交渉をめぐり、批判的な声が高まりつつある中で実施された。立候補者は、最終的には現職のアフマディネジャド大統領、ムサビ元首相、「闘うウラマー集団」所属のキャルビ師、レザーイ元革命防衛隊司令官の4人となった。結果は、現職大統領が62.6%の支持を得て再選された。しかし、選挙の不正疑惑を指摘するムサビ、キャルビの支持者を中心に、市民の間で再選挙の要望が高まった。6月14日にはムサビ、キャルビが憲法評議会に選挙結果の取り消しを申請、翌15日にテヘランで数十万人の抗議デモが行われた。このような市民の抗議デモに治安部隊が対応し、逮捕者や死者が出る事態となった。その後、現職大統領支持を早くから表明していたハメネイ最高指導者が選挙は正当であるとし、抗議デモの中止を求めた。一方、政府はアフマディネジャド大統領の支持基盤である革命防衛隊や民兵組織バシジを中心に反政府活動の取り締まりを強化した。この中で、逮捕者の殺害や外国人ジャーナリストと研究者がスパイ容疑で身柄拘束を受ける事件も発生した。イランにとって民主化、言論の自由といったテーマが体制維持勢力に問いかけられた大きな選挙となった。