アラブ首長国連邦(UAE)の首長国の一つであるドバイの政府系企業ドバイ・ワールドが2009年11月に債務返済繰り延べを要請したことで世界経済に影響を与えた問題。08年のリーマン・ショックの影響でアラブ湾岸産油国では株価や不動産価格が下落した。中でも、観光リゾート開発など不動産ブームに沸いていたドバイの損害は大きく、その債務額は約800億ドルに上った。特に海上大型施設の開発を手がけていたドバイ・ワールドは傘下のナキール分を合わせて590億ドルの債務を抱える中、09年12月に期限が迫る35億ドルの債務返済が問題となった。ドバイ政府は、政府債の発行などにより返済資金の調達をしていたが、突然11月に2010年5月までの返済繰り延べ要請を発表した。この発表により他の湾岸産油国の株価をはじめ、同地域と関係が深いヨーロッパの金融機関の株価やユーロその他の多くの通貨が下落した。この事態は、UAEの中で豊富な原油からの資金を持つアブダビ首長国の支援を受けることでひとまず鎮静化に向かった。なお、ドバイの不動産開発が鈍化したことで、ロシア、イラン、中国の投資家が多くの損失を出したといわれている。また、多数の出稼ぎ労働者を送り出しているインド、パキスタン、バングラデシュなどは海外からの送金が減少している。