経済封鎖下にあるガザへの国際的支援船をイスラエル軍が拿捕(だほ)しようとして、乗っていたトルコ人9人が死亡した事件。イスラエルは、2007年からガザを経済封鎖した。これに抗議するヨーロッパやイスラエルなどの人権活動家らは、経済封鎖を破り船で支援物資をガザに送る活動を開始した。イスラエル軍は、当初、小型船による支援物資輸送を黙認していた。その後、船による武器密輸を警戒したイスラエルは、支援船をいったん拿捕し、積み荷を検査してガザに送るようになった。10年5月末に組織された支援船団は6隻。欧米の活動家らは拿捕に対し、反対運動をアピールする機会として利用するため抵抗しなかった。しかし、トルコ船籍のマビ・マルマラ号の乗務員は、イスラエル軍兵士に激しく抵抗した結果、イスラエル軍側が発砲し、トルコ人9人が死亡、多数が負傷した。イスラエルは、正当防衛を主張し、トルコは公海上での海賊行為と非難して、謝罪と賠償を要請した。両国の対立は、その後も継続し、トルコは、イスラエル軍機のトルコ領空通過を禁止するなど、両国関係は冷却化した。国連が設置した調査委員会は、9月下旬、重大な国際法違反があるとした。イスラエルが設置した調査委員会は、11年1月イスラエル軍の行動は正当だったとした。同年9月に、国連の調査委員会は、イスラエルによるガザ海上封鎖は、合法及び適切な措置であるとした一方で、イスラエルが行使した武力については、過剰かつ不当であるとした。同発表後の9月2日、トルコは、トルコ駐在のイスラエル大使を国外に追放し、イスラエルとの二国間関係を、2等書記官をトップとする関係に格下げした。12月、イスラエル国会は、首相の反対を押し切り、オスマン帝国下でのアルメニア人に対する大量殺害を虐殺(genocide)として認定する法案についての協議を開始するなど、両者の関係は依然、険悪である。