イスラエルとアメリカの特殊な関係。イスラエルが最も頼りにする国はアメリカであり、アメリカもイスラエルの安全保障にコミットする立場を維持している。2009年にオバマ政権が成立して、イスラエルとアメリカの関係には変化の兆しがある。世界のユダヤ人の大半はアメリカかイスラエルに居住している。アメリカには約600万人、イスラエルには578万人(2010年)が住む。アメリカのユダヤ人は、政治的、社会的に大きな影響力を持っている。またユダヤ・ロビーが効果的な活動をしており、両国関係は緊密。アメリカがイスラエルとの関係を深めたのは1967年の第3次中東戦争後で、冷戦時代には戦略的関係を強化し、膨大な軍事・経済援助を行った。しかし、冷戦後の91年に発生した湾岸戦争では、アメリカはイスラエルにイラク問題に関与しないよう求めるなど、イスラエルとの親密な関係は、中東におけるアメリカの国益と相反する傾向も増加した。2001年の9.11テロ後、ブッシュ大統領(当時)は、アメリカに対する国際的なイスラム系テロ組織の脅威と、イスラエルが直面するテロの脅威を混同した。09年に発足したオバマ政権は、前政権の過度の親イスラエル政策から、より公平な政策にかじを切った。オバマ大統領の政策は、アラブ諸国に歓迎されたが、アメリカのユダヤ・ロビーやイスラエルの反発を受けた。アメリカ国内では、前政権の過度の親イスラエル政策は、逆にイスラエルの国益に沿わないとする新しい考え方が増加している。10年3月、アメリカは、イラクやアフガニスタンでの戦争と中東和平問題をリンクさせる問題意識を表明し、中東和平交渉で進展がないと、中東に駐留するアメリカ軍将兵の命にかかわると見なすようになった。イスラエルのネタニヤフ政権は、オバマ大統領が進める中東和平に抵抗しており、12年1月時点で、イスラエルとアメリカの関係は、かつてなく悪化している。また日本ではあまり知られていないが、アメリカに存在する強烈なイスラエル支持勢力に、福音派のキリスト教徒勢力がある。同勢力のイスラエル支持は、聖書の解釈による宗教的なもので、現実の政治とは無関係であり、西岸からの撤退に、イスラエルの右派より激しく反対している。