イスラエルは核保有国と見なされているが、公式には否定も肯定もしていない問題。イスラエルは、1950年代から核兵器の製造を秘密裏に開始し、すでに数百発の核兵器を保有しているといわれる。イスラエルは、核保有について「灰色政策」を採用しており、否定も肯定もせず、公式には、イスラエルは中東で最初に核兵器を使用する国にはならないとしている。イスラエルは保有する潜水艦に巡航ミサイルを搭載しており、核攻撃への報復体制を整えているともいわれている。イスラエルが中東で唯一の核保有国であり、イスラエル国家存亡の危機にならない限り核使用はないと想定された時期は、灰色政策は有効だったかもしれない。しかし、1980年代にはイラクが、2000年代にはイランが核兵器製造を秘密裏に進めているとの疑惑が浮上している。国際社会や中東諸国では、イランの核兵器製造に反対しているが、その一方で、イスラエルの核保有を黙認するのはフェアではないとの議論が生まれている。アメリカは、イスラエルの核保有疑惑を黙認してきたが、10年にオバマ政権は、国際原子力機関(IAEA)でイスラエルの核についても議論する姿勢を見せた。中東諸国では、20年ごろの稼働をめざして原子力発電所を建設する動きが広まっている。中東地域から核兵器をなくす会議が12年にエジプトで開催される予定である。こうした状況の変化の中で、イスラエルの灰色政策は、見直しを迫られつつある。10年には、イスラエル側でも灰色政策の見直しを求める議論が出ている。その主張では、イスラエルの有権者は、核使用の手続きについてまったく知らされておらず、誰がどう決定するかわからないのは危険であるとしている。イスラエル政府は、自国の核保有については明言を避けつつ、中東の他の国が核兵器を保有することに強く反対しているが、その姿勢は、国際社会の理解を得られなくなりつつある。