ハマスが統治するパレスチナ自治区ガザの国境管理問題。1948年からガザの主権は未定だが、住民が生活する以上、行政サービスは必要である。67年にガザを占領したイスラエル軍は、軍政を敷き、軍が国家的機能を代行し、住民に対する行政を行った。2005年にイスラエル軍はガザから撤退し、軍政が終了して、パレスチナ自治政府が国家機能を代行した。しかし、自治政府は、主権国家ではない。そのため暫定的措置として、EU(欧州連合)が監視団を国境事務所に派遣した上で、自治政府が国境管理業務を行うことになった。07年6月、ハマスがガザ統治を開始した結果、EUは監視団を引き揚げた。ガザとエジプトの境界事務所は、国境事務所の機能を停止した。ガザ・エジプト境界では、エジプト側は国境としての機能はあるが、ガザ側にはその機能はない。ガザを統治するハマスが、国境を管理するためには、以前の取りきめのようにEU監視団を派遣してもらうか、ハマスが国家になるしか方法はない。しかし、ハマスは、必要とされる政治的な対処や決定を避けている。ハマスは、エジプトとの境界に密輸用の地下トンネルを掘り、08年1月には境界の壁を爆破して、一時的に住民がエジプト側に流れ込むなど、国境の壁を壊したり、抜け道を作っているが小手先の対応。ガザ側の国境管理体制が整備されない限り、人の出入りや支援物資を含む物流はスムーズに行かない。