イスラエルが占領しているシリア領土で、軍事的な戦略要衝。南北約80キロメートル、東西15~30キロメートルで沖縄本島程度の広さ。イスラエルの水源のティベリア湖を見下ろす高原。1967年の第3次中東戦争の際、イスラエル軍が占領した。73年の第4次中東戦争では、イスラエルとシリア軍の大規模な戦車戦が行われた。67年戦争の際、国連安全保障理事会(安保理)は決議242を採択した。同決議は、イスラエルにゴラン高原の返還を要求している。イスラエルは、81年12月にゴラン高原を併合したため、イスラエル国内法ではイスラエル領土だが、国際的にはシリア領土と見なされている。91年から開始された現行の中東和平交渉で、イスラエルとシリアは、約8割がた合意している。残る問題は、国境線の画定だと推定されている。シリア側は、ティベリア湖の水際までシリア領にすることを要求しているようだ。シリアの和平の条件はゴラン高原の奪回である。イスラエルがシリアと和平を達成したいなら、ゴラン高原を返還するしかない。イスラエル側は、段階的返還を主張し、シリア側は一括返還を要求している。一方、イスラエルもシリアも、大規模な戦争を避けたい点では同じだ。73年戦争以降、ゴラン高原は極めて安定した休戦地域で、停戦違反はほとんどない。74年から国連兵力引き離し監視団(UNDOF)が駐留している。日本の自衛隊は96年2月から同監視団に兵員を派遣している。イスラエルの世論調査では、ゴラン高原返還に反対する人が多いが、ゴラン高原を返還しないとシリアとの和平はない。