イスラエルが占領地で進める住宅建設活動。イスラエルは、1967年の第3次中東戦争で、シナイ半島(エジプト)、ゴラン高原(シリア)、パレスチナ(西岸・ガザ)を占領した。占領地には、防衛のため屯田兵的な住宅(入植地)を建設した。シナイ半島の入植地は、イスラエル・エジプト和平条約締結後、82年までに撤去された。2005年には、イスラエル軍の撤退を前にガザの入植地が強制撤去された。現在入植地が残るのはゴラン高原と西岸。ゴラン高原の入植地は屯田兵的性格を持つため、和平条約が締結された場合、撤去される公算が高い。しかし、西岸(東エルサレムを含む)は、旧約聖書にかかわる土地であり、イスラエル右派の土地に対する執着が強い。西岸の入植地は、併合をなし崩し的に推し進めるため、また、交渉では既成事実として使うために、右派勢力が積極的に建設を進めた。
西岸の入植地は、当初小規模の屯田兵型の入植地が多かったが、1980年代からベッドタウン型の大型入植地が建設されるようになった。西岸と東エルサレムの入植者数は、92年には約24万人だったが、2010年では約49万人に増加した。イスラエルとパレスチナとの交渉では、イスラエル軍の西岸撤退が前提となっている。イスラエルの左派と中道政権は、領土の交換を行い大規模入植地をイスラエル領に編入し、小規模入植地を放棄する戦略を持つ。イスラエルの宗教政党や右派は、東エルサレムを含む西岸からの撤退を先送りし、合意に至る前に、さらに入植地建設を進めて既成事実を積み上げようとしている。09年6月、カイロで演説したアメリカのオバマ大統領は、イスラエルに入植地建設の中止を求め、その後も一貫して建設中止を要求している。パレスチナ側は、入植地建設の中止を交渉の前提条件にしている。西岸の入植地は、イスラエル国内の基準では、政府が承認した入植地と承認しない不法入植地があるが、国際的には、東エルサレムを含むすべての入植地は不法入植地である。