2011年夏にイスラエルで起きた、経済問題に抗議する大規模デモ。イスラエルでは初めての経済問題に関するデモ。11年7月、イスラエル最大の都市テルアビブの南部で、家賃の高騰に抗議するため若者たちが抗議のテント生活を開始した。彼らは、自分たちの様子をツイッターなどで配信した。物価高への抗議に対する共感は全国に波及し、各地で同様のテント村が生まれた。毎週末に抗議デモが呼びかけられ、9月初旬には、建国以来最大規模のデモといわれる40万人が参加した。デモ参加者らは、富の偏在、重税、競争原理の働かない経済制度などを批判し、社会正義の実現を要求した。デモには、家族づれや友人が誘い合って参加し、政治的なデモとは性格が違う抗議行動になった。このデモの背景には、1990年代以降、ハイテク産業などで経済規模が拡大したイスラエルで生まれた過度の貧富の格差や、一部の企業が国の富を独占するゆがんだ経済構造がある。デモ参加者らは、国家の安全保障も大事だが、国民の生活の安全保障も、同じように重要だと訴えた。抗議デモは9月初めで、いったん終了した。経済構造のゆがみは、イスラエル社会の大きな問題として浮上し、2013年までに行われる国政選挙の主要な争点になるとみられる。イスラエルは、国民の生活の質を向上させるためには、これまでの安全保障政策の見直しを迫られるかもしれない。