2011年12月にアメリカで成立した国防権限法によるイラン経済への追加制裁。11年11月、国際原子力機関(IAEA)は、イランに核開発の疑惑があるとの報告書を発表した。この発表後、欧米諸国の対イラン制裁が一段と強化された。アメリカ議会は、イランへの資金流入防止を目的として、イラン中央銀行と取引のある外国の金融機関に事実上の制裁を科す条項を盛り込んだ「2012会計年度国防権限法案」を作成した。同法案は、12月中旬に下院と上院が可決し、12月31日にオバマ大統領が署名した。欧州連合(EU)は、12年1月初めにイラン産原油の全面禁輸措置で基本合意し、同月23日のEU外相理事会で一連の追加制裁措置を正式決定した。イランの原油、石油製品の輸入、購入、輸送について新規契約を禁じ、7月1日からは既存の契約分も含め全面禁止する。石油の約1割をイランから輸入している日本は、アメリカからイラン輸入の削減を迫られている。今回の措置は、経済制裁としては最大レベルの措置とされている。イラン側は、強く反発し、11年末から12年初めにかけて、ホルムズ海峡封鎖について言及したため、一時湾岸地域で緊張が高まった。ロシアなどは、イランを過度に追い詰めるのは得策ではないと欧米の対応を批判している。日本は同盟国であるアメリカの要求と、長い友好関係を持つイランとの関係維持との間で、難しい選択を迫られている。