2011年のエジプトでの政変後、シナイ半島での治安が悪化していること。11年春の政変後、シナイ半島を通ってイスラエルに天然ガスを送るパイプラインは、12年7月まで計15回の爆破攻撃を受けている。半島北部のエルアリーシュなどの警察部隊に対する襲撃事件も頻発している。エジプト政府の遊牧民に対する統制力が弱まったこと、半島の発展が遅れていることに対する住民の不満などがその背景にある。シナイ半島は、エジプト軍とイスラエル軍が戦車戦を繰り返した地域である。両国が締結した和平条約ではスエズ運河以東にエジプト軍が配置されることは厳しく規制されている。エジプト軍は、半島内での秩序回復のために、部隊の強化を図りたいが、イスラエルは、エジプト軍の配備が強化されることは軍事的な脅威だとみなしている。他方、半島の治安が確立されない限り、ガザへの陸上からの武器密輸は規制できない。イスラエルとエジプトは、半島の秩序確立と両国の平和条約を履行することの間で矛盾に直面している。エジプトは和平条約の条項の修正を考えているが、イスラエルは拒否している。