エジプトで革命後に採択された新憲法。2011年の政変後、旧憲法を部分改正した修正憲法が国民投票で採択された。その後、新議会が憲法制定委員会を作り、憲法草案を作成する予定だったが、最高憲法裁判所の司法判断などがあり、憲法制定が遅れた。その結果、新しい政治体制を規定する新憲法がない状態になり、軍最高評議会やムルシ大統領は憲法宣言を出して憲法を補完させていた。こうした中、最高憲法裁判所が、12年12月はじめに、再び憲法制定委員会を解散させるのではないかとの懸念が大統領側に強まった。そのためムルシ大統領は、11月22日、大統領権限を強化する憲法宣言を行い、新憲法が制定されるまでの暫定的な措置だとして、大統領命令は司法の上にあるとした。突然の大統領権限強化に、再び独裁者の登場を懸念した司法界や民主活動家らが強く反発し、エジプト各地で政変後最大規模の抗議行動が発生した。その混乱の中、11月30日憲法制定委員会は、16時間に及ぶ協議で憲法草案を強行採決した。12月1日、ムルシ大統領は、同憲法草案を承認し、15日に国民投票を行うと発表した。民主勢力は、当初国民投票をボイコットするとしたが、その後、選挙に参加して憲法草案を否決する戦術をとった。12月15日と22日に新憲法草案に対する国民投票が実施され、賛成63.8%で承認された。イスラムの扱い、女性の権利などで世俗の民主勢力には不満が多い。