2013年9月にシリアが保有を認めた兵器。シリアは化学兵器保有について明らかにしない灰色政策を取っていた。13年に入ると政府軍も反体制派も相手が化学兵器を使用したと非難するようになった。13年3月国連安全保障理事会は、シリアでの化学兵器の使用の有無に限定する調査委員団を創設した。同調査団は8月18日にようやくダマスカスに到着した。その直後の21日、ダマスカス南郊で化学兵器が使用され多数の死者が出たと反体制派が主張する事件が起きた。国連調査団は、現場の調査を開始した。アメリカ、フランス、イギリスは、国連調査団の分析結果が出る前の段階で、映像や独自の情報源によれば政府軍が化学兵器を一般市民に対して使用したことは確実だと判断し、軍事制裁の準備を開始した。しかし、イギリス議会は軍事的制裁に反対を決議した。そのためアメリカのオバマ大統領は、軍事力行使について議会に諮問した。9月7日、ロシアは、シリア保有の化学兵器を廃棄する計画を提案した。シリア政府は同提案を受諾(保有の公式確認)し、その後アメリカも合意した。シリア保有の化学兵器の廃棄が合意された後の9月16日、国連調査団がダマスカス南郊での化学兵器使用を確認したと発表した。9月に化学兵器禁止機関(OPCW)はシリアでの査察を終え、同月末にシリアの化学兵器処理計画を承認し、安保理はOPCWの計画を承認した。OPCWと国連の合同調査団が10月から現地での作業を開始した。国外での廃棄のための化学兵器輸送は14年1月に開始された。国外に輸送された化学兵器は、米軍の船上で廃棄される。計画では、14年中に廃棄作業を終える予定である。