2014年に就任したエジプトのシシ大統領の政権。11年の「アラブの春」の結果、独裁体制が崩壊したエジプトでは、翌12年新憲法の下、民主的選挙が行われ、ムスリム同胞団系の政党が議会を制し、大統領選挙では同胞団系のムルシが勝利した。しかし、ムルシ政権の政治的実務能力がないことに失望した国民は、13年に至りムルシ大統領の辞任を求める大規模デモを行うようになり、ムルシ支持者と反対者に国論は二分された。同年7月1日エジプト軍は、ムルシ大統領に48時間以内に事態を収拾するよう要求した。大統領が軍の要求を無視すると、7月3日、軍は実力で大統領を排除した。この時、軍の参謀総長であり国防相だったのがシシである。「クーデター」後、軍は権限移譲計画を発表した。国民の支持を得たシシ国防相は、14年3月国防相を辞任し、大統領選挙への立候補を表明。5月の大統領選挙で圧勝し、6月16日に大統領に就任した。シシ政権は、ムスリム同胞団との対決姿勢を維持し、国内の緊張が継続している。初代から4代まで軍出身者の大統領が続いた後、自由な選挙で選出された初めての民間人だったムルシ大統領が軍に排除され、再び軍出身者が大統領に就任したことで、民主化プロセスが逆戻りすることが懸念されている。しかし、国民は、11年の政変以降の不安定化した治安・秩序の回復を優先させており、強権政治に対して反発する動きは今のところ弱い。