イラク国内の統一を強めるため、2014年8月に就任した首相。イスラム教のシーア派とスンニ派が対立するイラクでは、マリキ前首相が自身と同じシーア派を重用し、スンニ派を排除する政策を行っていた。14年夏、イラク北部で過激派組織「イスラム国」(IS)が支配地域を拡大した最大の理由は、イラク軍に戦意がなく、武器を放棄して逃亡したことである。アメリカや湾岸諸国は、イラク中央政府を国民が信頼せず、政治的権威がないことが「イスラム国」の拡大を許したと批判した。マリキ前首相は選挙で選出された首相であるが、国際的な圧力を受け辞任に追い込まれた。アバディ首相は、国民の信頼を得るため、シーア派とスンニ派の和解を進めており、同年10月に新内閣を組閣。10年以来空席だった国防相や内務相を任命したが、「イスラム国」対策ではまだ具体的な成果を生んでいない。