旧称南ローデシア。南部アフリカの人口1000万人強の旧イギリス植民地。1980年の独立以来、白人入植者と大多数を占めるアフリカ人との共存で比較的安定し、順調な経済を維持していたが、2000年代に入り、長期化したムガベ政権に対する不満・批判が顕在化するようになった。08年3月、大統領選挙が行われ、第1回投票で最大野党民主変革運動(MDC)のツァンギライ議長が、5期目をめざすムガベを得票数でわずかに上回ったものの過半数獲得には至らず、決選投票に持ち込まれた。しかし野党支持者への嫌がらせや暴力行為が頻発し、ツァンギライは自由かつ公正な選挙は望めないとして出馬を断念。その結果、対抗馬なき投票で、ムガベは6月に勝利宣言を行った。アフリカ連合(AU)は7月、与野党の連立政権樹立に向けた話し合いを促進する決議を採択した。9月には与野党の間で、ムガベが大統領にとどまり、ツァンギライを新首相とする連立政権樹立の合意が調印された。ムガベの強硬な既得権維持戦略で難航しながらも、09年2月、ツァンギライは首相に就任したが、ムガベ側の嫌がらせは続いた。この間、同国の生産活動はまひし、公共保健医療サービスの多くは機能しなくなった。