サハラ砂漠南縁部は、大西洋に面する西アフリカから紅海とインド洋に面する東アフリカまで雨量がきわめて少なく、かつ年によって乱高下を繰り返すため牧畜や農業の基盤がもともと脆弱で、ハンガーベルト地帯とも呼ばれてきた。2003年以来、東部のエチオピア、ソマリアおよびケニア東部で干ばつが本格化して、大量の食料不足人口が発生した。とりわけ冷戦期において米ソの勢力確執の舞台となったソマリアは、冷戦終結後内戦状態に陥り、01年のアメリカでの同時多発テロ以来、アメリカが打ち出している反テロ戦争の舞台ともなったため、食料不足住民に対する救援をきわめて困難にしている。同国では、アメリカおよびアメリカの要請で同盟関係にあるエチオピアやケニアが支援する親西側暫定政権と、南部を実質的に支配下に治めている厳格なイスラム教義に立つアルシャバブ武装勢力とが、内戦状態にある。そのため、西側から食料援助を試みている国連世界食糧計画(WFP)などはアルシャバブ勢力支配地域へのアクセスができず、飢餓人口を増大させてきた。国連難民高等弁務官(UNHCR)によれば、11年末までに近隣諸国に逃れた難民は95万人、国内避難民は150万人近くと推定され、国際社会では「今世紀最悪の人道危機」とも呼ばれている。さらに国連食糧農業機関(FAO)によれば、国際穀物市場でのバイオ燃料向け需要の急増も穀物価格を高騰させ、購買力の低い東アフリカの貧困層の飢餓状況を助長している。