アフリカ大陸の中部に位置する旧フランス植民地の内陸国である中央アフリカ共和国では、2012年12月、野党と反政府武装勢力5団体が連合したセレカ(地域の言語で連合、同盟を意味する)が、03年末にクーデターで文民政府を倒したフランソワ・ボジゼ政権の打倒を目ざして侵攻を開始した。13年1月、ボジゼ政権との和平合意がなされたが、3月に再び侵攻が開始され首都のバンギが陥落し、ボジゼが国外亡命する中でセレカのリーダーの一人、ミシェル・ジョトディアが自ら大統領に就任した。しかし、国際社会は新政権を承認せず、孤立した。セレカの民兵は住民の不満を武力で抑え込んだが、9月には、ジョトディア政権は公式にセレカの解散を宣言しなければならなくなった。住民に対する暴力は止まず、統制を欠いたイスラム系中心の団体とキリスト教系住民との対立が激化し、憎悪と報復の連鎖が宗教対立へと発展した。こうした事態をうけて14年1月、欧州やアフリカ連合などの圧力のもとでジョトディアは辞任に追い込まれ、暫定政府たる移行国民評議会によって、カトリーヌ・サンバ=パンザが暫定女性大統領に選出された。アフリカ内の武力紛争をアフリカ人のイニシアチブで解決したいというアフリカ連合と、この地域をチャドとともに自国の実質的影響圏として位置づけてきたフランスが共同して平和維持部隊を派遣し、14年2月中旬には、フランスは国連の要請でイスラム系住民を迫害するキリスト教系武装自衛団アンチバラカの武装解除を開始した。しかし、欧州連合(EU)はフランスの強い増兵要求に対して当面消極的で、中央アフリカ共和国の南部に集中し人口の多数を占めるキリスト教徒が、アンチバラカの扇動によって少数コミュニティーのイスラム教徒住民を虐殺する民族浄化型暴力が拡大している。中央アフリカ共和国は、金、ダイヤモンドなどを産出できる潜在的資源国であるが、独立以来、政情は安定せず、近隣諸国の政変に影響されやすい。