2013年9月21日昼頃、東アフリカ、ケニアの首都ナイロビのショッピングモールに数人の武装集団が外国人を含むモール内の人々を人質にして立てこもり、警官隊との間で銃撃戦によって、民間人多数を含む70人近い死者と200人近い負傷者を出した。24日になって、ケニア政府が鎮圧宣言を出した。このテロ攻撃について、隣国ソマリアで欧米の強力な支援をうけて発足した政権下の内戦で苦境に陥っていた反政府イスラム原理主義の武装集団アルシャバブが犯行声明を出した。同団体によれば、同モールを狙ったのは欧米系の買い物客が集まるからだとし、ソマリアに侵攻したケニア軍の撤退を要求した。この背景には、ソマリア内戦において一時は領土の広範な地域を制圧したイスラム原理主義派の武装勢力イスラム法廷連合がエチオピア軍などの介入で追い詰められる中で生まれた、アルシャバブの過激な活動方針がある。アルシャバブは、すでに10年にエチオピア、ケニアとともに親米政権であるケニアの隣国ウガンダの首都カンパラでも大規模な報復テロ活動を実行していた。今回のナイロビ事件は、13年3月の大統領選挙で勝利したウフル・ケニヤッタ大統領が、前回の07年の大統領選挙時に民族集団間で起きた暴力対立の首謀者の一人として、国際刑事裁判所(ICC)に訴追されている中で生じ、同大統領は欧米を中心とする国際的非難にさらされていた。しかし今回の事件では、同国が東アフリカにおける反テロ対策の最前線で戦っていることを内外に印象づけることに成功した。アルシャバブ問題解決のためには、イスラム過激派が挑発して利用しようとするイスラム教徒中心でいまだ実質的内戦状態にあるソマリアと、キリスト教徒の多いケニア、ウガンダ、エチオピアとの間の暴力的宗教対立を、どのような宗教間の対話努力によって解消していくか、また若年層の長期大量失業の解消が、中長期的課題となろう。