ナイジェリア北東部を拠点とする急進イスラム武装組織。ボコ・ハラムとは西欧の教育を排するという意味のスローガン。2009年、イスラムの教えを厳格に守らせるとして、政府施設への襲撃や住民に対する残虐行為で多くの犠牲者を出し、この武装組織の存在が一挙にナイジェリア内外で知られるようになった。以来イスラム教徒の多い北部の都市を中心に襲撃を繰り返して地域住民に恐怖を拡散し、数万人規模の難民を発生させている。14年4月には北東部の地方都市で女子生徒が200人以上拉致され、同年8月にはこれらの支配地域に「イスラム国家」の樹立を宣言した。ボコ・ハラムの非人道的行為に対して本腰をあげて対策をとるべきとする国際的圧力の下で、ナイジェリアのジョナサン大統領はボコ・ハラムとの間に停戦協定を同年10月に実現し、これらの拉致被害者は解放された。しかし規律が不十分で蛮行を繰り返してきたナイジェリアの軍治安当局は、地域住民からの信頼も薄く、この武装組織はさらに国境を接するカメルーン北部にも活動領域を拡大し、同じような拉致事件を起こした。ナイジェリア北部は歴史的にイスラム教の王国が栄え、その勢力圏は現在のニジェール、チャド、カメルーンの一部にも及んでおり、拡大を容易にしている。また、キリスト教徒の多いナイジェリア南部は産油地帯もあり、経済的には北部に比して恵まれており、国内格差問題を独立以来抱えてきた。近隣諸国は緊縮財政から国境管理など実効的領域統治ができないため、ボコ・ハラムの支配圏は容易にこれらの諸国に波及した。また、15年3月中旬には、イラクとシリアにまたがり地域住民を支配している過激派組織「イスラム国」(IS)への忠誠表明をネットに投稿し、戦闘員を募集するなど、国際的安全保障問題に発展している。