2009年8月20日に第1回投票が行われた、タリバン政権崩壊後2度目の大統領選挙。選挙戦には約40人の候補者が乱立したが、現職のカルザイ大統領が第1回の投票で過半数を獲得し続投を決めるか、元外相のアブドラ・アブドラほか対立候補が追い上げ、決選投票へと持ち込まれるかに焦点が当たった。カルザイは「汚職の一掃」を公約に掲げ、パシュトゥン人以外の民族の軍閥・地方有力者を自陣営に引き込み、支持の拡大をはかる。選挙期間中、タリバンや反政府軍閥による妨害行為や棄権呼びかけが続き、投票日が近づくにつれテロ行為が多発、投票所へのテロも予告され、選挙当日だけで少なくとも30人が殺害された。報道によれば、約7000の投票所のうち、治安上の理由で約800カ所が閉鎖。投票権の売買、二重投票防止策の不備など不正が相次いだ。約3400の投票所で不正が発覚し、正式な告発だけでも約2600件(うち深刻な不正告発は600件以上)に及んだ。
選挙をめぐる混乱とカルザイ政権への不信によって、投票率は推定約40%と低迷(04年の大統領選挙では71%)。開票作業中、多数の不正票が認定された。中間報告では過半数を制すると目されていたカルザイの得票は最終的に49.7%にとどまり、30.59%の票を獲得したアブドラと11月7日に決選投票に臨むこととなった(10月21日、独立選挙委員会発表)。しかし、選挙管理体制の刷新を要求していたアブドラ陣営は「公正さや透明性が期待できない」として決選投票への不参加を表明(11月1日)、カルザイの再選が宣言され、国際社会もこれを受け入れた。
一連の選挙過程は、カルザイ政権に対する国民の不信任と同政権の統治能力の低下を露呈した。決選投票が行われなかったことで、再選後のカルザイ政権の正統性にも疑問を付させる結果となった。