学校週5日制(学校5日制ともいう)は、1992年9月から月1回、土曜日を休業日にする方式で実施され、95年4月から月2回となり、2002年4月から土曜日をすべて休業日にする完全学校週5日制になった。この5日制導入・拡大の趣旨は、家庭や地域社会で過ごす時間を増やし、子どもたちの生活をゆとりと潤いのあるものにするという点にあった(文部科学省)。この趣旨は1977年に改定され80年から実施された、「ゆとりと充実」をスローガンに掲げ、「ゆとりの時間」を創設した学習指導要領の趣旨と基本的に同じであった。このことから、いわゆる「ゆとり教育」は80年から始まったと言えるが、特に学校5日制が導入された92年から2010年度までの学習指導要領の改訂では教育内容と授業時間が削減され続けたことから、この間に小中・高校教育を受けた世代は「ゆとり教育世代」と言われることにもなった。しかし、1990年代後半から「学力低下」論と「ゆとり教育」批判が盛んになったために、完全学校5日制が実施される直前の2002年1月に文部科学省は「確かな学力の向上のための2002アピール『学びのすすめ』」を公表し、翌03年には実施されたばかりの学習指導要領の異例の一部改訂を行い、授業時間数の厳格な確保と習熟度別指導や補充・発展学習を奨励するなど、「ゆとり教育」路線から学力重視路線への転換を明確化することになった。そして、11年から実施されることになった学習指導要領では、教育内容と授業時間数が大幅に増加することになり、また、小学校高学年での英語活動の実施や長期休暇中や土曜日に補充的な授業を実施することも奨励された。このようにして、「ゆとり教育」から学力重視教育へと転換していくことになったが、「ゆとり教育」や学校5日制の導入には、当初から批判があった。その批判の主な論点は、(1)様々な理由や事情で学校でしか勉強しない・勉強できない子どもの学力が低下し学力の二極分化が進む、(2)学習塾通いが増加し家庭の経済力による学力差や教育機会の格差が拡大する、(3)非行・犯罪その他の種々のトラブルに巻き込まれる危険性が高まる、などである。なお、学校5日制の導入・拡大の背景には、受験競争の激化と、1980年前後から頻発するようになった校内暴力、85年前後から深刻化したいじめや少年の非行・犯罪の急増などがあったが、もう一つには、80年代以降の公務員の週休2日制の拡大に対応した公立学校教職員の週休2日制(当初は夏休みや冬休み中のまとめ取り方式)を教職員・予算を増やすことなく実施するという隠れた課題・方針もあった。