公立の小中高校において「学校教育法施行規則」(第61条)で休業日とされている土曜日に授業を行うこと。2008年に学習指導要領が改訂され、11年度から授業時間が大幅に増えることになったが、同改訂の基になった08年1月の「学習指導要領の改善」に関する中央教育審議会(中教審)答申が「学校週5日制の下での土曜日の活用」の拡充に言及していたことを受けて、文部科学省は「土曜授業に関する検討チーム」を設置した。その「中間まとめ」を13年6月に、最終まとめを同年9月に公表し、同年11月に上記・施行規則を一部改正して、教育委員会が「必要と認める場合は、土曜日等に授業を実施することが可能である」旨の明確化を図り、併せて、「土曜日の教育活動推進プラン」を策定し、14年度予算概算要求に「土曜授業推進事業」2億円と「地域の豊かな社会資源を活用した土曜日の教育支援体制等構築事業」18億円を盛り込んだ。なお、「最終まとめ」は、「全国一律での土曜授業の制度化については、今後教育課程全体の在り方の中で検討する必要がある」としている。この施策の背景と理由について上記「中間まとめ」では、(1)近年、土曜授業を行う学校が増えていること、(2)世論調査でも土曜授業に対する支持が高いこと、(3)土曜日を有意義に過ごせていない子どもが少なからず存在すること、が挙げられているが、加えて、次のような実態や課題・関心があることも重要である。第一は、学力形成や進学機会(入試競争)に関連して公立・私立間や公立学校間の格差への関心が強まっていることである。近年は5日制を実施する私立学校が増えているものの、完全5日制になる直前(00年)時点での私立の5日制実施率は高校で約8割、中学で6割強だった(文部科学省調査)。特に東京の私立は現在も相対的に実施率が低い。他方、12年度の公立の土曜授業実施率は、小学校8.8%、中学校9.9%、高校3.8%だった(文部科学省調査)。東京都内公立校の実施率は高く、東京都教育委員会は10年に都立学校について月2回を上限とする土曜授業に関する通知を発出しており、また、相当数の公立小・中学校も、区教委や市教委の判断で12年度から月2回の土曜授業を開始している。第二は、08年改訂の学習指導要領が11年度以降実施されたことに伴い、授業時間の確保が厳しくなったこと、第三は、「脱ゆとり教育」路線と07年から始まった全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)に象徴される「(テスト)学力重視」政策の影響下で、教育委員会も学校も学力向上に力を入れるようになったこと、第四は学習塾通いの増加とそれに伴う教育格差(家庭の経済力等による学校外学習機会の格差)の拡大である。上記の中教審答申や、その他の政策文書も文部科学省も、学校週5日制の意義を重視し、学校・家庭・地域の連携・協力により学校内外の教育環境の充実を図る必要性を説いているが、土曜授業の拡大が上記第三のテスト学力の偏重や学校間・地域間の競争激化につながらないようにしていくことが重要である。