戸籍を有しない子ども。戸籍法では子どもが生まれた場合、父母などの届出義務者が市区町村に出生届を出して戸籍を作成することになっている。ただし、民法上の規定で、夫と事実上の離婚状態となった女性(夫の氏を称して婚姻)が、他の男性の子を懐胎し、(元)夫との婚姻中または離婚から300日以内にその子を出生した場合には、原則として、その子は(元)夫の子と推定され(嫡出推定)、(元)夫とその女性が婚姻していた当時の戸籍に記載されることが定められている。しかし、その女性が(元)夫に子の存在等を知られたくないなどの理由から出生届を提出しないために、子が戸籍に記載されないケースが生まれる。背景に夫によるDV(家庭内暴力)などの問題が潜んでいる場合にはなお深刻である。無戸籍によって、進学や就職が難航する、参政権を行使できないなど多方面で深刻な不利益を被ることになる。2015年1月現在、法務省調べで日本には533人の無戸籍者がいると判明しているが、統計の性質上これは氷山の一角にすぎないと考えるべきである。