希望すれば婚姻後も夫婦がそれぞれの姓(民法では氏)を名乗ることのできる制度。現行民法(750条)では夫婦はどちらか一方の姓を名乗る(夫婦同氏)と決められており、妻側の改姓が96.0%である(2015年、厚生労働省「人口動態統計」)。改姓により職業遂行上不利益が生じる女性が増加したほか、娘が名前を継ぐことを望む親からも姓を柔軟に選択できる制度を求める声がある。旧姓使用を認める事業所や地方自治体は増加したが、書類上は戸籍姓しか使用できない場合も多い。1996年に法務省が法案化に着手して以来、同姓か別姓かを選択できる制度(選択的夫婦別姓)や原則夫婦同姓で家庭裁判所の許可により例外的に別姓を認める(例外的夫婦別姓)などの改正案が議員立法として国会に上程されたこともあるが、夫婦が別姓では家族の絆が無くなるといった反対意見も根強く、成立に至っていない。2015年12月、最高裁判所は夫婦別姓を認めない夫婦同姓の民法規定は合憲であるとの判断を示したが、選択的夫婦別姓制度については合理性がないと判断するものではないとし、国会での議論を求めた。その後18年1月、ソフトウェア会社社長の男性らが東京地方裁判所に、結婚しても戸籍上の姓を変えないことを選べるという新しい枠組みでの選択的夫婦別姓を求める裁判を起こした。17年の世論調査(内閣府)では、同調査開始(06年)以来初めて、選択的夫婦別姓制度導入の容認派(42.5%)が反対派(29.3%)を上回った。70代以上は反対派が過半数で、世代間での意識の違いがみられた。夫婦や親子の姓が違うことで家族の絆が弱まると考えている人は31.5%、影響はないと考える人は64.3%だった。