離婚から300日以内に生まれた子どもは、一律に「前夫の子」とする民法772条(嫡出推定)の規定。女性は離婚後6カ月の再婚禁止期間を過ぎれば再婚が可能になるが、婚姻から200日過ぎて生まれた子は「現夫の子」と推定する規定もあるため、子どもの父親が再婚相手や別の男性であることがはっきりしていても、この規定により出生届が受理されないケースが出ていた。「前夫の子」となることを避けるために、出生届を出さずに無戸籍となっている子どもの存在が明らかになり、社会に衝撃を与えた。2007年5月、法務省はこの規定に対して、離婚後の妊娠を示す医師の証明書があれば、再婚相手の子または非嫡出子として出生届が出せるとの通達を出したが、現実にこの通達で救われるケースは1割程度に留まる。離婚成立前に妊娠した残りの9割の子どもは、これまで通り「前夫の子」として戸籍が作られ、それを変更するために家庭裁判所で親子関係の不存在を確認する調停を行わなければならず、負担が大きい。女児出生届の不受理(08年)が違憲であるとして、09年に岡山で全国初の損害賠償を求める訴訟が起こされたが、11年には最高裁判所で棄却された。一方で15年12月、最高裁は女性のみに6カ月の再婚禁止期間を定める民法の規定(733条)は違憲であり、100日を超える部分は医療や科学技術の発達した今、正当化するのは困難だとの判断を示し、法務省は離婚後100日を過ぎた女性の婚姻届を受理するよう市区町村に通知。法制上も、その後の民法改正により、16年6月以降、再婚禁止期間は6カ月から100日に短縮された。また100日以内でも、離婚時に妊娠していない事実を証明すれば再婚が可能となった。