過酷な労働や売春を強いることを目的に、国境を越えて女性や子どもを売買する人権侵害行為。人身売買ともいう。「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」とそれを補足する人身取引防止議定書があり、日本は2000年に本体条約に署名、02年に議定書に署名し、05年6月には国会承認したが、締結はしていない。04年アメリカ国務省は世界の人身売買に関する報告書で、日本が国際基準を満たさない監視対象国だとした。日本は「人身取引対策行動計画」を策定(04年、内閣官房)、人身売買罪を盛り込んだ刑法改正(05年)を実施し監視対象国のリストからはずれたものの、08年発表の同報告書は、日本政府による被害者の認知や保護への取り組みは十分ではないと指摘している。人身取引を犯罪として処罰するだけでなく、被害者の人権を尊重しつつ、被害者を保護し、支援することが重要であり、国際協力は欠かせない。日本政府は指摘を受け、09年には人身取引の手口の巧妙化や潜在化していることを踏まえて「人身取引対策行動計画2009」を策定。「男女共同参画基本計画(第2次)」(05年)も、女性に対するあらゆる暴力の根絶を図るために、人身取引に関する総合的・包括的対策を推進することとしている。民間活動団体として、JNATIP(人身売買禁止ネットワーク)、NPO法人「人身取引被害サポートセンター ライトハウス」、移住女性のためのエンパワーメントセンター「カラカサン」、「女性の家HELP」などがある。人身取引の問題と取り組むには政府とNGOとの協力が不可欠である。警察庁の調査によれば、14年の人身取引事犯の検挙件数は32件、検挙人員は33人で、被害者の国籍は日本人が12人、フィリピン人が10人。16年の検挙件数は44件、検挙人員は46人。被害者の国籍は日本人が25人と過去最多で、タイ人が8人、カンボジア人が7人だった。