日中戦争と続く第二次世界大戦中に、日本軍の「慰安所」などで日本兵士との性行為を強いられた女性の人権回復に関する問題。性奴隷問題ともいう。日本人女性を含むが、朝鮮半島を中心に、朝鮮、台湾、フィリピンなどの10代から20代の女性たちが集められた。1991年に韓国の元慰安婦の女性が初めて東京地裁に提訴し、この問題が注目されることになった。日本政府は93年には旧日本軍の関与を認め、お詫びと反省表明を行い、被害者に「国民的償い」をするために、民間に募金を呼びかけ、財団法人「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金。07年3月解散)を95年に設立。首相の手紙とともに、被害者1人当たり200万円の償い金を渡した。ただし、韓国や台湾では、国からの公式な謝罪ではないとして、女性支援団体などが反対、償い金を受け取らない被害者も多かった。アメリカの下院は2007年7月の本会議で、この問題について日本政府が公式に謝罪することを求める決議を採択した。日本政府にこの問題の解決を求め、ソウルの日本大使館前で毎週水曜日に行われるデモは1992年1月以降継続されており、2011年12月に通算1000回となった。また同月に市民団体が日本政府への抗議の意味で、大使館前の歩道に被害女性を象徴する少女のブロンズ像を設置した。「慰安婦」問題は、戦時性暴力の問題として国家間関係、民族差別、女性差別などの視点から考えなければならない重要な問題で問題であったが、被害者が高齢化していることを踏まえて、15年12月末に日韓外相会談が行われ決着合意した。合意内容は、韓国が新設する財団へ日本が10億円を拠出すること、在ソウル日本大使館前に設置した少女像の撤去、この合意が最終かつ不可逆的な解決であり、今後国際社会で慰安婦問題について互いに非難や批判する行為を控えることなど。しかし17年5月の韓国大統領選で、「合意は誤りだった」として日本との再交渉を公約し、当選した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、同年12月に、前朴槿恵(パク・クネ)政権による日韓合意の検証過程結果を発表し、「韓国側の負担が大きい不均衡な合意であった」と主張した。