男性より長命な女性は、長い老後生活を送る可能性が高い。内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」(2010年)で、女性の72%が日頃の生活全般で不安を感じていた。不安の内容は、健康や病気(78%)、介護が必要な状態になる(53%)、生活のための収入(33%)など。16年、女性の平均寿命は87.14歳(男性80.98歳)で、東日本大震災の影響を受けた11年以外は、長年にわたり世界1位を記録していた(厚生労働省)。平均寿命と健康寿命の差で計算すると、女性が何らかの病気を抱えて生きるであろう期間が約13年(男性は約9年)となる(10年、同省)。65歳以上全体の相対的貧困率は約2割だが、特に女性の単身者は5割を超えている(10年、内閣府)。寿命の伸びは今後も続く可能性が大きく、老後の健康や介護、生計維持など深刻な問題がある。老後生活費の中心は年金となるが、受給額平均は男性に比べ大幅に低い。賃金格差や非正規雇用の割合の高さが年金受給額に反映され、現役時代の男女格差が老後格差に直結している。2000年に介護保険制度が導入されて改正も重ねられているが、介護現場での人員不足や制度の不備があり、家族頼み、女性頼みの状況は残っている。女性は非婚・離婚者に限らず人生の最後を単身で過ごす可能性が非常に高く、女性がひとりで老後を生きるノウハウが書かれた上野千鶴子著『おひとりさまの老後』(07年、法研)がベストセラーとなったのは、長い老後を「ひとりで生きる」ことがリアリティーをもってきたためだろう。老後に備えた情報収集や財テクの勉強、ネットワーク作りを始める女性が増加している。