「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」の通称。1980年にオランダのハーグ国際私法会議で採択、83年発効。国際結婚が破綻した夫婦の間で、どちらかが無断で子どもを国外に連れ出した場合、もう一方の親の返還要求に基づいて子どもを元の国に戻す義務を規定している。国境を越えた子の連れ去りは、子どもに有害な影響を与える。子どもの返還やその後の面会交流の実現には迅速な対処が求められ、そのための国際的ルールとして採択された。欧米では離婚後の共同親権制度が一般的だが、日本は単独親権制度をとっている。親権や面会権に対する考え方や制度が異なるとして日本は未加盟であったが、11年5月には加盟に向けた準備を進めることが閣議了解された。13年5月、条約の締結が国会で承認され、6月には関連法も成立した。14年1月には署名が閣議決定され、オランダのハーグで同月24日署名した。関連法には、強い拒絶や暴力被害の可能性など、子どもの心身に害がある場合は返還を拒否できると規定されている。海外在住の日本人とその子ども、さらに日本在住の外国人とその子どもは、母国への帰国を困難にし、滞在国での過酷な状況を甘受する結果を招きかねない等として、同条約への日本の加盟に反対している市民団体もあったが、日本は14年4月1日に加盟した。加盟後の1年間で、日本から外国への子の返還が3件、外国から日本への子の返還が4件実現した。17年になると、外務大臣が受け付けた援助申請は総数で237件、このうち日本から外国への子の返還は20件、外国から日本への子の返還は19件実現した。日本から外国への子の返還を行わないとの結論に至ったのは16件、外国から日本への子の返還を行わないとの結論に至ったのは8件だった(外務省)。