妊娠や出産にあたって、女性が職場などで受ける精神的・肉体的な嫌がらせや不利益な取り扱い。ストレスから切迫流産などに至る危険性もある。被害は深刻で、全国の労働局への相談が増加している(厚生労働省)。2015年、厚生労働省の初調査では、妊娠や出産、育児をした女性でマタニティーハラスメントを経験したのは派遣社員が最多で48.7%、次いで正社員21.8%、契約社員13.3%、パート社員5.8%。被害の内容は「迷惑」「辞めたら」など権利を主張しづらくする発言が最多(47.3%)で、他に雇い止め、解雇、賞与の不利益算定、退職や非正規への転換の強要、不利益な配転、人事考課での不利益な査定など。違法行為にあたる被害もあるが、働く女性の妊娠や出産が男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で保護されていることを知らない人も多く、厚生労働省は実効性のあるものへと法律の見直しを始めた。少子高齢化が進行して女性の労働力も期待されてはいるが、働きながら出産や子育てをする女性は厳しい環境に置かれている。出産を機に6割の女性が仕事を辞めている(厚生労働省「出生動向基本調査」)が、理解し合える職場環境があればより多くの女性が仕事を続けることができる。15年3月、マタニティーハラスメントに悩む女性の支援活動に取り組むNPO法人「マタハラNet」の小酒部さやか代表が、アメリカ国務省から贈られる「勇気ある国際的な女性賞」を日本人で初めて受賞した。