望まない妊娠や出産に悩む人のため、緊急避難的に赤ちゃんを匿名で受け入れている施設。主旨は、捨てられて命を落とす赤ちゃんや、中絶を選ばざるを得ない母親を救うこと。2007年5月、熊本市の慈恵病院は、ドイツの例を参考にして日本で初めての赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を設置。病棟の外壁にポストの窓口を設置し、室内に保育器を置き24時間対応している。ポストの扉の中には親宛の手紙が置かれていて、それを受け取ると内扉の鍵が開いてブザーが鳴り、職員が赤ちゃんを保護するという仕組み。保護責任者遺棄罪などの法令に違反しないよう、警察や児童相談所と連携している。同病院では里親制度や、里親が戸籍上の実子として育てる特別養子縁組制度につなげる対応も行っている。「こうのとりゆりかご」専門部会(熊本市)の第4期検証報告によると、17年3月までに約130人が預けられ、その約8割は身元が判明している。預けられた主な理由は、生活困窮、未婚、パートナーの問題、不倫、世間体、戸籍に入れたくないなど。赤ちゃんたちは、約2割が親元に戻り、5割以上が特別養子縁組や里親など家庭的環境で、約2割が乳児院などの施設で養育されている。里親が養育していても、実の親が引き取りたいと申し出た場合には元の家庭に戻されることもある。子どもにとって最適な養育環境を与えていくための、法制度の整備が今以上に必要とされている。同病院は、医療的ケアを受けられずに自宅などで出産する「孤立出産」を防ぐため、母親が医療機関にて匿名で出産でき、子どもは一定年齢になると出自を知ることができるという「内密出産」制度の導入も検討している。