医師が治療上必要と認めた薬剤について、患者や家族にその処方箋を交付し、薬局の薬剤師がその処方箋に基づいて調剤する、医師と薬剤師の分業体制をいう。医師が薬を直接投与して薬の小売りマージンを得ることは医の倫理に反することと考えられている。戦後の医師法でも原則的に医薬分業が定められているが、実際には長い間、医薬分業は進展しなかった。それには保険が支払う薬価と医療機関が支払う薬の購入価格との間に大きな差があって、この薬価差益が医療機関の重要な収入源になっていたことが関係していた。医薬分業は、薬偏重の医療費構造にメスを入れるために推進された。また、高齢化や疾病構造の変化に伴って、複数の診療科にまたがって受診する患者が増え、薬の併用も多くなり、医薬分業を通して、かかりつけ薬局での薬歴管理や服薬指導を発展させる必要性も高まった。院外処方箋の発行枚数を総外来処方件数で除した比率を、医薬分業率と呼ぶが、その比率は2013年度で67.0%に達している。しかし、日本の医薬分業の実態は、医療機関の側の薬局がその医療機関の処方箋を集中的に引き受けるいわゆる「門前薬局」によるところが大きく、かかりつけ薬局の機能を果たすところまでは至っていない。